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原稿の「赤字」の入れ方・戻し方——制作会社とのやり取りが1往復減るフィードバック術

 2026.09.18

制作会社やライターから初校が届いた。ここからが、発注担当者にとっての正念場です。

「修正をお願いしたのに、意図と違う形で直ってきた」
「社内の確認者ごとに言うことが違い、取りまとめだけで1週間かかった」
「3回目の戻しでようやく固まったと思ったら、役員のひと声で振り出しに戻った」

こうした経験をお持ちの方は、少なくないのではないでしょうか。

原稿のやり取りが長引く原因は、制作会社の力量や相性だけにあるわけではありません。じつは、赤字(修正指示)の入れ方と戻し方を少し変えるだけで、やり取りは確実に1往復減らせます。スケジュールに余裕が生まれ、追加費用のリスクが下がり、原稿の質も上がります。

この記事では、創業から20年、数えきれないほどの赤字を受け取ってきた私たち編集プロダクション・ブリッジワークスが、「受け取る側」の視点から、伝わるフィードバックのコツをご紹介します。

往復が増える原因は「赤字の量」ではなく「赤字の質」

最初にお伝えしたいのは、赤字が多いこと自体は問題ではない、ということです。びっしり書き込まれていても、意図が明確な赤字なら、私たちは一度で直せます。

逆に、たった数か所でも往復が増えてしまう赤字には、共通するパターンがあります。

  • 「もう少しいい感じに」「なんとなく違う」など、直す方向がわからない

  • Aさんは「もっと詳しく」、Bさんは「長いので削って」と、指示が矛盾している

  • 2回目の戻しで、初稿のときにはなかった新しい要望が出てくる

  • 全員の確認が終わったあとに、決裁者が初めて原稿を読む

いずれも文章力の問題ではなく、段取りと伝え方の問題です。順番に、防ぎ方を見ていきましょう。

STEP1 赤字を入れる前に、まず最後まで通読する

原稿が届くと、つい1行目から気になった箇所に手を入れたくなります。けれども、最初にやるべきなのは、ペンを持たずに最後まで読み通すことです。

冒頭で「この説明が足りない」と書き込んだ内容が、じつは後半でしっかり説明されていた——これは、現場で本当によく起こります。

通読するときの視点は、ひとつだけ。「企画の目的に照らして、この原稿は合っているか」です。誰に、何を伝え、読後にどう動いてほしい記事だったのか。そこに立ち返って、まず全体の方向性を判断します。

もし方向性そのものがずれていると感じたら、細かい赤字を入れる前に、制作会社へ電話かオンラインで相談するのが近道です。土台がずれたまま表現を直しても、その赤字はほとんど無駄になってしまいます。

STEP2 赤字を3種類に分けて書く

私たちが赤字を受け取ったとき、頭のなかで最初にやるのは「仕分け」です。この仕分けを発注側でやっていただけると、修正の精度とスピードは大きく上がります。

  1. 事実の修正(必ず直す)——数字、固有名詞、役職、日付、製品仕様などの誤り。正しい情報を添えてください

  2. 方針の修正(相談して直す)——構成の入れ替え、論点の追加・削除、トーンの変更など。理由とセットで伝えてください

  3. 表現の好み(任せる/できれば)——言い回しや語尾の違和感。「可能であれば」とひと言添えるだけで十分です

すべての赤字が同じ強さで書かれていると、受け取る側は「どれが絶対で、どれが提案なのか」を判断できません。結果として、全部を言われたとおりに直すことになり、文章のリズムや全体の整合性が崩れてしまうことがあります。

【必須】【相談】【任意】とラベルを付けるだけでも、効果は十分です。

STEP3 「どう直すか」より「なぜ直したいか」を伝える

赤字の書き方で、仕上がりにもっとも差が出るのがここです。

たとえば、ある段落に「ここは削除」とだけ書かれていたとします。私たちは指示どおりに削りますが、理由がわからないので、同じ趣旨の記述がほかの箇所に残っていても気づけません。

一方、「この取り組みはまだ社外に公表していないため、触れないでほしい」と理由が書いてあれば、原稿全体を見渡して、関連する記述をすべて調整できます。

もうひとつ例を挙げましょう。

  • 伝わりにくい赤字:「もっとやわらかく」

  • 伝わる赤字:「読者は入社1〜3年目の若手社員。いまの文章は経営層向けのように硬く感じるので、もう少し話しかけるようなトーンにしたい」

「具体的にどう書き直せばいいのか」まで考えていただく必要はありません。目的や背景さえ共有していただければ、それを文章に落とし込むのは私たちの仕事です。むしろ、理由を伝えていただいたほうが、ご自身で書き直すよりも良い代案が返ってくることが少なくありません。

もちろん、「この言い回しに差し替えたい」という具体的な文案がある場合は、そのまま書いていただいて構いません。その際も、ひと言理由が添えてあると、前後の文章を自然につなげやすくなります。

STEP4 社内の意見は「ひとつの声」にまとめてから戻す

往復が増える最大の原因は、じつはここにあります。

確認者が3人いれば、赤字は3通り出ます。それぞれのファイルをそのまま転送していただくと、矛盾する指示のどちらを採るべきか、制作会社には判断がつきません。確認の質問をお返しし、社内で再調整していただき……と、それだけで1往復が消えてしまいます。

戻す前に、次の3点を整えていただくのが理想です。

  • 窓口をひとりに決める——制作会社とやり取りする担当者を一本化する

  • 矛盾は社内で解消してから戻す——意見が割れたら、担当者が判断するか、決裁者に確認する

  • 赤字は1つのファイルに集約する——複数のファイルに分かれていると、反映漏れの原因になります

そしてもうひとつ、決裁者には初稿の段階で目を通してもらうことを強くおすすめします。最終確認で初めて読んだ役員のひと声で構成から作り直しになる——いわゆる「ちゃぶ台返し」は、スケジュールにも費用にも、もっとも大きな影響を与えます。全文を読む時間がとれない場合は、タイトルと見出し、冒頭の数段落だけでも確認してもらうと、リスクは大きく下がります。

STEP5 戻し方の「型」を決めておく

最後は、実務的なルールの話です。プロジェクトの最初に決めておくと、毎回のやり取りがぐっと楽になります。

  • ツールをそろえる——Wordの変更履歴とコメント、Googleドキュメントの提案モード、PDFの注釈機能など。変更箇所が見える形で戻すのが基本です。上書きで直してしまうと、どこが変わったのかを探す作業が発生します

  • 2回目以降は「前回の赤字が直っているか」を中心に見る——再校で新しい要望が次々に出てくると、やり取りは終わりません。気になる点は、できるだけ初稿で出し切るのがコツです

  • 戻しの期日と回数を共有する——多くの制作会社では、見積もりに含まれる修正回数が決まっています(2回までが一般的です)。回数を意識することは、予算を守ることにもつながります

  • 良かった点も、ひと言伝える——「この導入がとても良かった」「この見出しは社内でも好評でした」。こうした声は、制作側が御社の好みをつかむ最大の手がかりになります。2本目、3本目の初稿の精度が目に見えて上がります

赤字は「ダメ出し」ではなく、共同作業の設計図

赤字を入れることに、どこか申し訳なさを感じる方もいらっしゃいます。けれども、私たち制作側にとって、的確な赤字は何よりありがたいものです。お客様の事業や読者のことをいちばんよく知っているのは、お客様ご自身だからです。

最後に、今回のポイントをまとめます。

  1. 赤字を入れる前に、最後まで通読する

  2. 赤字を「必須・相談・任意」の3種類に分ける

  3. 「どう直すか」より「なぜ直したいか」を伝える

  4. 社内の意見をひとつにまとめてから戻す

  5. ツール・回数・期日の「型」を最初に決めておく

赤字は、原稿をより良くするための共同作業の設計図です。伝え方が少し変わるだけで、やり取りは減り、仕上がりは良くなります。

ブリッジワークスでは、原稿の確認フローや社内調整の進め方についても、プロジェクトの最初の段階でご提案しています。「確認者が多くて毎回まとまらない」「制作会社とのやり取りに時間がかかっている」といったお悩みがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。

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